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59. 今昔物語より 恋のレクイエム


古典からの引用ですが、心の矛盾を描いたラブストーリーです。『11.ワニのいる河』もあわせて読んで頂ければ幸いです。原文を損ねない程度に少し手を加えました。

今は昔、大和の国に一人の娘がいた。大層器量がよく父母は大切に育てていた。
また、河内の国に住む人に一人の男がいた。年も若く男ぶりもよかったので、京に上って宮仕えし、笛を上手に吹いた。気立てなどもよかったので宮中でも評判だった。
そのうちこの若者は、大和の国に美しい娘がいると伝え聞き手紙を送って熱心に求婚して、はれて添い遂げることができたが、3年ばかり一緒に暮らして夫が思いがけず病気になりに2.3日わずらううちに、あっけなく亡くなってしまった。
女は、嘆き哀しみ恋しさに狂わんばかりだった。その国の若者達が沢山手紙を送っては求婚してきたが、女はふりむきもしないでなおも死んだ夫だけを恋慕って泣き暮らすうちに3年目の秋になった。
女が悲しみに泣き伏していると、夜半頃に笛を吹く音が聞こえてくる。亡き夫によく似た笛の音だと一層悲しみが深まり涙があふれた。
その笛の音が近づき、女の敷居戸のそばに立ち
「戸を開けてくれ」という。
その声はまさしく夫の声なのでびっくりして懐かしく思うものの恐ろしくもあって戸を開けることができなかった。
隙間から外を窺うとまぎれもない夫がそこに立っている。
立っている様子は、生きていた頃と変わらないがやはり恐ろしかった。
夫の身体から煙が立ち昇っているので女はいよいよ恐ろしくてものも言わないでいると
男は、「お前があまり私のことを恋慕ってくれるのがあわれなので、無理やり暇をもらってやってきたのだが、ひどく恐がっているようだからもう帰ろう。日に3度火の燃える苦しみを受けているのだ」
死出の山 越えぬる人のわびしきは
    恋しき人に あわぬなりけり
といって、笛の音が遠ざかりやがて消えた。
(出典:今昔物語 死せる夫の来たるを見ること 第二十五)

-----------------------------------------------
この女性が嘆き悲しんだのは誰のためだったのでしょうか?
そして、この夜以降も夫のために泣いてくれるのでしょうか?
『11.ワニのいる河』を渡った娘と死んでから妻のもとに訪れた男も愛情を伝えたくて訪れて恋破れました。
2005 Apr. 29

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